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2019-2-27世界が注目する水素エネルギー

加速する水素社会実現に向けた
取り組み

2018年10月23日、水素の活用をテーマとした世界初の国際会議、水素閣僚会議が東京で開催された。閣僚のほか、自動車・エネルギー関連企業など、300人以上の水素に関係する企業・政府関係者及び研究者が参加。水素発電の実用化に取り組むMHPSからは六山(むやま)副社長兼CTOが出席。「水素利活用の推進に向けた水素製造とサプライチェーン」について講演した。

欧州でも水素活用の動きが広がっている。2017年1月、水素を利用した新エネルギー移行に向けたグローバルなイニシアチブである水素協議会が発足。エネルギー・運輸・製造業の世界的なリーディングカンパニー13社で発足したが、年々加盟社が増加し、2018年9月現在で53社がメンバーとなっている。三菱重工もサポーティングメンバーとして加盟、MHPSが三菱重工グループとして参画している。

水素エネルギーが注目される理由

水素エネルギーが注目される理由は何だろうか。一つは、水素は利用時にCO2を発生させないため、温暖化対策に大きく貢献できることがあげられる。もう一つのポイントは、エネルギーセキュリティだ。従来の化石燃料は、日本にとっては、そのほとんどが海外からの輸入であり、とくに石油や天然ガスは産出国が偏在するため、2回の石油ショックを思い出すまでもなく、中東の政情不安など、地政学リスクや安定供給の問題が付きまとっていた。一方、水素は多様なエネルギー源からの製造・貯蔵・運搬が可能なため、供給・調達先の多様化による調達・供給リスクの低減が期待できる。

では、水素はどのようにして作られるのだろうか。水素製造の方法については、大きく以下の3種類に分類することができる。

一つ目は、現在既に実用化されている化学工場などで副産物として生成される副生水素や、石油や天然ガス、石炭を改質やガス化して生成する化石燃料由来の水素だ。

二つ目は、化石燃料由来の水素とCO2回収・利用・貯蔵(CCUS:Carbon Capture, Utilization and Storage)の組み合わせる方法だ。MHPSがガスタービン技術領域での実現可能性調査(FS)に参画するオランダの天然ガス焚き火力発電所の水素への燃料転換プロジェクトでも、この方法での水素の供給が検討されている。

三つ目は、水の電気分解により水素を生成する方法だ。電気分解に再生可能エネルギーによる電力を用いれば、製造段階でもCO2を排出しないことになる。

MHPSの六山は、「将来の水素関連動向を見通した場合、中期的には CCUSを活用した化石燃料由来の水素が普及するだろう。長期的には、コスト削減と技術革新により再生可能エネルギー由来の水素が主流になる」と予想する。

発電エネルギーの水素への転換

パリ協定の発効以来、世界的に脱炭素・低炭素化の流れが加速しており、発電分野におけるCO2の削減が求められている。

では日本の発電におけるエネルギーの現状はどうだろうか。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの普及が急速に進んでいるが、2016年時点では全体の83.8%を、化石燃料(LNG、石油、石炭等)を使用した火力発電が占めているのが実情だ。

火力発電については、燃料から電力へのエネルギー変換効率を継続的に高める努力が続けられており、最新の発電方式であるガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電については、発電効率が約64%、排出されるCO2の量は、従来型の石炭焚き火力発電所の半分となる高効率なシステムも開発されている。

今後も、火力発電の効率向上のためのさらなる技術開発、再生可能エネルギーの利用拡大が進められる計画であるが、加えて劇的にCO2排出量を低減する技術として期待が高まっているのが、水素の発電燃料としての活用だ。

MHPSの六山は、「日本の火力発電所における二酸化炭素削減に向けた動きの中では、まず天然ガスと水素を混合して燃料とする混焼が実現し、将来的に100%水素を燃料とする水素専焼発電にシフトするであろう。」と述べる。最先端の火力発電の技術を生かし、燃料を水素に転換することにより、安定供給を実現し、同時にCO2を排出しない発電が可能となるのだ。

多方面で活用が期待される水素であるが、克服すべき課題の一つがコストである。日本政府が発表した「水素基本戦略」のロードマップの中では、現状の水素コスト(ステーション価格:100円/N㎥)から、2030年には国際水素サプライチェーンが構築され、現在の約1/3となる30円/N㎥という目標値が掲げられている。

MHPSの六山は、「40万キロワットクラスのガスタービン・コンバインドサイクル発電所を1年間運転すると 水素の消費量はFCV200万台分に相当する。発電は水素の大量消費に直結し、そのコストダウンに貢献する。」と述べる。発電への水素の活用が、水素のコストを下げ、発電分野以外での利用も促進する可能性がある。



エネルギーキャリアとしての水素

さらに、水素は、発電のための二次エネルギーの役割にとどまることなく、貯蔵が可能で輸送も出来る「エネルギーキャリア」となることも可能だ。

電力は発電と消費が同時同量であることが求められるために、ある自然条件下では再生可能エネルギーは、余剰電力を産み出してしまう。その余剰電力(Power)を水素(Gas)へ変えて貯蔵することで、製造コストの安い水素が製造可能となる。P2G(Power to Gas:電力から水素ガスへ)と呼ばれるプロセスだ。

この考え方によると、日照量や風などの自然条件が整った場所(たとえば送電網がない離島や、電力の地産地消ができない消費電力が少ない過疎地域など)で再生可能エネルギーによる発電を行い、その電力で水素を製造することで、エネルギーを「運ぶ」ことも可能になる。海外の安価な再生可能エネルギーで発電された電力や、その他の未利用エネルギー(褐炭、副生水素等)を水素に変えることができ、日本へ輸入する際にも強みを発揮する可能性がある。また、水素のキャリアとしては、液体水素の他、MCH(メチルシクロヘキサン)、アンモニアなど、様々な選択肢があり、多方面にわたる研究開発が進められている。

今後の展望

2019年6月、日本が議長国となるG20では、「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する閣僚会合」が予定されており、水素の役割と重要性についてもテーマになる予定だ。

また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでも水素エネルギーの活用が予定されている。東京都が立ち上げた「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」では、FCV 、FCバス 、水素ステーション、家庭用燃料電池などの導入についての目標も掲げられている。

世界に目を向けると、2025年には、MHPSが実現可能性調査(FS)に参画するオランダの44万kWの大型天然ガス焚きガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電所において、100%水素燃料による発電への転換が予定されている。これにより、現在排出されているCO2(年間約130万トン)を、ほぼすべて削減する計画だ。

世界のエネルギー政策を歴史的に俯瞰すると、時代の価値観を反映したエネルギーソースが選択され、数十年周期で変化していることがわかる。エネルギーは時代によって変わり、時代もそれに合わせて進化する。
今後、世界中で、多くの国、企業、研究者が叡智を出し合うことで、水素社会実現へ向けたロードマップはさらに加速するだろう。